屋敷の最大の見どころは、巧妙な防衛建築にあります。
公事宿の顧客は裁判のため上洛していますので、身の危険を感じる者もいて、奇襲に備えた用心深い作りになっています。

武者隠(むしゃかくし)

大広間の天井裏に隠された見張り部屋で、逗留中の大名に来訪者がある場合、警護の者が階下の様子を見張っていました。
開いた格間(ごうま)は、下座に入る来訪者からは採光用の天窓に見えますが、天窓の対面側に見張り窓があります。
見張り窓は来訪者の死角となり気付かれないのです。
来訪者が不穏な動きをしようものなら、窓から素早く降りて防戦しました。
それまで、天窓と思い込んでいたところから武者が現れたのですから、さぞかし驚いたことと思います。

来訪者から見える天窓

天窓の対面側にある見張り窓

格間を閉めると普通の格天井になる

吊り階段

屋敷は一度奥に入ってしまうと、二階への階段がすぐに見つからないように作られています。
この階段は「皆如庵」茶室の水屋にあって、通常は吊り上げておくことで茶壷棚に見せかけていますが、降ろすと二階へと通じ、大名を避難させた後、警護の者が素早く元に戻しました。

茶壺棚に見せかけて収納されている

降ろすと階段が現れる

階下からは想像できないほど空間が広がる

隠し階段

この階段は、上り口が見つからないように仏間の奥に隠されています。
また、二階からの降り口には引戸が付いており、引戸は裏側から鍵が掛かるようになっています。
吊り階段が見つかり追手が二階へ迫った時、この階段で階下へ戻りますが、降りる際裏側から鍵を掛ければ、追手は二階から開けることができなくなり、元来た道を引き返すことになります。

引戸は裏側から鍵が掛かるようになっている

騙戸(だましど)

隠し階段で階下へ戻る途中の部屋に仕掛けられており、追手が襖を開けると壁のような板戸が行く手を遮ります。
脇の小さな網代襖から、奥の隠し階段へと通じる廊下に出られます。
追手をひるませ、避難の際に時間稼ぎしたものと思われます。

襖と網代襖が並んで設けられている

大きい襖を開けても板戸が行く手を遮る

猿梯子(さるばしご)

吊り階段も、隠し階段も見つからないように作られているので、二階で控える警護の者は大勢が階下へ降りられません。
そこで加勢が必要となれば、ここから階下へと降りました。
鴨居に足をかけて、猿のように降りてくることから、その名があります。
二階から扉を閉めると、下から見ても降り口とは気付かれません。

下から見ても降り口とは気付かない

天井の扉が開いて、加勢の武者が降りてくる

隠し部屋

押入れの奥に潜り口があり、窓ひとつない四方が厚い壁で囲われた隠し部屋があります。
公事宿で罪人預かりを引き受けたとき、座敷牢の代わりに使ったものです。

押入れの隠し部屋の潜り口